昨今のD2Cビジネスの流行りに伴い、新たにブランドを立ち上げる企業や個人の方が増えてきています。
しかし、多くのD2Cブランドが生まれる中、大赤字で採算が合わず撤退していく姿を幾度となく見てきました。
貴社にはそんな失敗を歩んでほしくない…そんな想いで、筆をとりました。
この記事では、D2Cブランドを立ち上げる際に失敗する要因を挙げ、改善策を併記しました。
他社の成功事例は、時期や環境などが追い風となっていることもありますが、失敗要因に関しては汎用性が高いため、これからD2Cブランドを立ち上げる方は必見の内容です。
失敗要因①:成功している企業を真似て始める
まず挙げられるのは、成功した企業の戦略やプロセス・時代背景などを理解せず、成功している企業をそのまま自社で真似て始めることです。
成功する過程では『市場の動向や薬機法・広告表現の厳格化、消費者のトレンドの変化』など多くの外的な要因を含むため、外部に見えている部分だけ真似をしても上手くいかないケースは往々にしてあります。
例えば、時期やトレンドが違うという理由で、競合他社のように上手くいかないケースがあります。
私が新卒で入社した会社は化粧品のベンチャー企業でしたが、もし参入があと2年遅かったら、同じようにはグロースしなかっただろうと確信しています。
その理由は、年々Web広告などで言える訴求・ベネフィットが厳しくなっていたり、物流にかかる費用が以前と比べて高騰していたり、多くの競合が参入して化粧品というジャンルがコモディティ化してきたことが挙げられます。
成功している企業を参考にして意思決定を行うことは非常に大切ですが、あくまで自社のターゲットとなるペルソナのインサイトを深掘りした上で判断することを忘れないでください。
なお、「〇〇という商品が売れているらしいから、弊社も始めよう!」という安易な判断は危険ですが、競合他社の訴求や販売方法については積極的に分析を行い、良い部分は自社に取り込みましょう。
- 「教えてURL」などのchromeの拡張機能を使って、他社が出稿している広告媒体を把握する。
- 各広告媒体ごとに出稿しているLPの構成を分析する。
<例> LINEではアンケート記事LPを挟んで展開し、YDAでは第三者コンテンツ訴求の記事LPを使っているな~…など - 公式サイトではなく、LPで何をユーザーに訴求しているかを再注力して分析する。
- 自社ECと合わせて、Amazonなどのモールではどれくらい売れているか「SellerSprite」などの拡張機能を使って分析する。
例えば、LPやバナーなどのクリエイティブの中でも、継続的に出稿されている競合他社のLPは詳しく分析すべきです。
多くの企業はFacebook/Instagramに広告を出稿しているため、Meta社が提供している「広告ライブラリ」で、競合クリエイティブやLPをまずは見てみるのがいいでしょう。
失敗要因②:そもそも集客が上手くいかない
新たにD2Cブランドを立ち上げた際、集客が上手くいかないという問題が最も多いです。
ECモールのようなプラットフォームを利用する場合は、そこに集まるユーザーから自然に集客が見込めることがありますが、自社サイトで直接集客する必要がある場合は、より包括的なマーケティング戦略が求められます。
事前に顧客ニーズの深掘りや、商品開発に注力することは重要ですが、商品開発前から集客方法を考えることも同様に重要です。
各集客チャネルごとに、商品開発の方法は異なります。
例えば、自社ECで売れる商品とAmazonで売れる商品では、特徴も価格帯も全然違います。
<例> 自社ECでは継続的な広告戦略が重視され、Amazonでは狙うべき検索キーワード戦略が重視される。
主要チャネルを明確化しておかないと、「いい商品なのになぜ売れないのか…?」と泣きを見ることになります。
成功するためには、購買するであろうペルソナのカスタマージャーニーマップや商品特性・価格を考慮し、どのようなアプローチで集客していくかをブレストして戦略を立てることが必要です。
集客方法としては、下記が挙げられます。
- リスティングなどのWeb広告
- 自然検索からの流入(オウンドメディア)
- ECモール(Amazonや楽天市場 など)
- クラウドファンディング
- プレスリリース
- ティザー広告・ドライテスト
- TwitterやInstagramなどのSNS
- アフィリエイト(SEO・アド・インフルエンサー)
- インフルエンサーマーケティング
- 他Webサイトへの記事の寄稿
- 紹介キャンペーン・口コミ施策
- 新聞・雑誌や折り込みチラシ
- ポスティング
- CM・インフォマーシャル …など
時間のリソースやプロモーション費用には限りがあるため、自社D2Cブランドの特性を踏まえ、各集客手法を事前に選定しておくことをおすすめします。
失敗要因③:事前リサーチを怠り、いきなり商品を作ってしまう
リサーチをせずにいきなり商品を作ることは、D2Cビジネスでの失敗要因の一つです。
特に化粧品のD2Cのように、OEM会社の社長から紹介された魅力的な成分に基づいて勢いで発注する流れがよく見られます。
- 多くのユーザーが魅力的に感じる成分なのか?
- 商品やサービスによって、どのようなベネフィット・効果効能が得られるのか?
- 市場や競合はどの程度存在するのか?
- 利益が出やすい原価で仕入れることができるのか?
- どのようなビジネスモデルで販売するか?
- ユーザーヒアリングを適切に行ったか?
- 年間でROI・ROASはどれくらい見込めるか?
…など、商品を作る前にやらなければいけないことは多岐に渡ります。
自社のD2C商品を作る前には、顧客インサイトを徹底的に深掘りし、年間計画シミュレーションを事前に策定することが重要です。
ROIやROASの予測に基づき、利益見込みを事前に把握し、一つずつ不安を潰していくことで、勢いだけでの失敗を避けることができます。
私の経験上、慎重な準備を経て進めることがD2Cブランドの成功には不可欠です。
年間計画シミュレーションや価格設計、販売モデルが自社では戦略立てが難しい際には、ぜひ一度弊社ジェネマーケにご相談くださいませ。
失敗要因④:商品の独自性や世界観が無く、競合に埋もれてしまう
商品の独自性や世界観が無く、市場で比較されたときに競合に埋もれてしまうというのも、失敗要因の1つです。
D2Cで大切なことは何か?と聞かれて真っ先に挙げられるのは、『ベネフィット・独自性・世界観』です。
とりわけ最近のZ世代では、D2Cブランドの世界観やストーリーに共感し、購買に至ることも少なくありません。
もちろん「開発ストーリーなんてどうでもいい!それより機能とスペックを教えてくれ!」という層もいますが、Amazonや楽天市場などのECモールからではなく、わざわざ自社サイトから購買してくれるユーザーには、独自性や世界観は重要な購買ファクターの1つです。
独自性を明確化するためには、市場・競合分析はとても大切です。
商品のベネフィットや独自性を明確に伝えられる状態にしておきましょう。
あわせて、どのような世界観に共感してもらいたいかを考えておくことで、より濃いファンの獲得に繋がります。
失敗要因⑤:原価率が高すぎる
原価率が高すぎる場合、利益確保が難しくなり、集客手法が制限されるリスクがあります。
商品、箱代、梱包、配送費用などを含む原価率の計算が重要です。
原価率が高すぎる場合、プロモーション費用の圧縮やインフルエンサーやブロガー、メディアを運用する方にお支払するアフィリエイト報酬の低下につながります。
※アフィリエイト報酬低下により、認知拡大ができず外部レバレッジがかけづらくなる
特にアパレル業界では、平均原価率が20~30%程度であるため、40%を超えると赤字のリスクが高まります。
ただし、インフルエンサーや芸能人などの強力な広告塔がある場合は、高い原価率でも利益を上げることが可能です。
例えば、オリエンタルラジオの中田敦彦さんが、2021年からアパレルのサステナブルブランドを始めましたが、自身のYouTubeで多くの人にリーチができるため、原価率65%でも利益を出すことが可能です。
原価率を抑えることで、より多くのユーザーにリーチする機会を得られます。
また、梱包材や商品箱に関しても、こだわりすぎて原価が高騰しがちですので注意が必要です。
失敗要因⑥:商品の質が悪く継続率が悪い
次に、商品の質が悪く、継続率が悪いことが挙げられます。
商品力に欠ける場合、Web担当者としては、販売戦略に頭を悩ませがちです。
D2Cブランドを展開している企業に現状の課題を訪ねると、『新規顧客の集客』と答えるケースが多いです。
しかし、よくよくヒアリングをしてみると、ボトルネックは継続率の低さだった、ということは往々にしてあります。
新規で顧客を獲得し続けたとしても、商品の質が悪ければ、リピート購買されず、いつまで経っても黒字転換しない状況に陥ってしまいます。
「CRM施策をどうすればいいか?」とご相談をいただくことがありますが、継続率を高める最大の施策は『質の高い商品を提供』することです。
質の高い商品でなければ、かけられる広告費やプロモーション施策が限られてしまうため、自信を持って販売できる商品を開発しましょう。
原価率を上げすぎず、商品の質を上げるというのはかなりの難題ですが、多くのOEM工場と粘り強く交渉することで、原価率を抑えられる可能性があります。
もしあなたが今からD2Cブランドを開発するフェーズであれば、「時間をかけすぎ!」と言われるくらい、商品を開発する前に、十分な時間をかけることをおすすめします。
失敗要因⑦:CRM施策を怠り、自転車操業になっている
多くのD2C企業は『新規顧客の獲得』に精一杯で、CRM施策まで十分に網羅されている企業は本当に少ないです。
日々の業務に追われ、CRM施策を二の次にしてしまっていると、後々痛い目を見ることでしょう。
新規顧客に費用を投じるためには、顧客を獲得した後の関係づくりが非常に重要です。
顧客が商品を購買した後に、どのような接点を持つかを深掘りしましょう。
また、新規顧客の獲得は、継続顧客からの売上よりも5倍の費用がかかると言われています。
継続的なリピート(CRM)を整えなければ、穴の開いたバケツに水を入れ続けるようなものだということを覚えておいてください。
CRM施策大全については、こちらの記事にまとめました。
失敗要因⑧:物流の重要性を軽視している
『物流はD2Cの要』と言われるほど、物流はD2Cブランドを運営する上で大切です。
物流の重要性を軽視すると、配送遅延やコスト増加での利益率の悪化など様々な問題が生じる可能性があります。
会社規模にもよりますが、物流の改善によって数億規模で経費を削減できることもあるため、物流に注力する担当者を必ず1人以上つけることをおすすめします。
まずは物流戦略について理解することが大切なので、物流の具体的な効率化と顧客満足度向上のためのポイントを、下記の記事で確認しましょう。
まずチェックすべきポイントは下記です。
- 梱包費用は削減できないか?
- 物流のオペレーションは改善できないか?
- 保管している在庫棚の位置は適切か?
- 商品が大量に売れたとき、スムーズな発送体制を組めるか?
- 在庫を抱えすぎていないか?
- 適切な在庫管理状況か?
上記以外にも、物流で改善すべきポイントは多くありますが、まずは自社のD2Cブランドに当てはめてチェックしましょう。
失敗要因⑨:無計画な店舗出店を進めてしまう
無計画な店舗出店は、D2Cブランドの失敗要因の一つです。
D2Cブランドをグロースさせていく際には、日々のランニングコストを極力抑えつつ、新規顧客を獲得する必要があります。
売上が伸びてきた際に、オフラインでの販売で加速させようと、無計画に店舗を出店するケースがありますが、人件費やテナント代が膨らみ。既存の利益を圧迫して経営難に陥る可能性があります。
まずは、テスト的にポップアップストアの開催から始め、オフラインでの顧客との関わり方を試していくフェーズを設けましょう。
ポップアップストアで、顧客とオフラインでコミュニケーションを取ることで、ユーザー体験が大きく向上した場合、店舗出店も選択肢になってくるかと思います。
店舗出店によりユーザー体験を向上し、売上アップに繋がっている事例では、FABRIC TOKYO が挙げられます。
オーダースーツのD2Cを展開している企業で、元々はユーザーが自宅でスーツサイズを測って注文をしていました。
しかし、注文はオンラインで完了したいが、サイズの計測はプロにお願いしたいというニーズがあったため、オフラインで店舗を構えることでCVRが高まったそうです。
上記のように、ユーザー体験が向上する場合は、店舗出店は売上や顧客満足を向上させますが、無計画な出店は避けるべきです。
失敗要因⑩:情熱を持ったWeb担当者がいない
情熱を持ったWeb担当者がいない場合、失敗に終わるケースが多いです。
D2Cブランドの成功要因として、創業者やブランドマネージャーの情熱というのはよく挙げられます。
商品に絶対の自信を持ち、自社D2Cブランドを多くの人に知ってもらおうと推進できる人材がいない場合は、成功から遠のいてしまうと常々感じます。
よくある失敗事例は、トップダウンでD2Cブランドを立ち上げることになり、担当者が愛着を持てない商品をなんとなく販売しているケースです。
D2Cブランドを担当するWeb担当者が「これは売れないよな…」と思っている商品を販売していくのは難しいでしょう。
また、少人数でD2Cブランドを立ち上げる場合、フルコミットできる人材が不足していることで、何から何まで中途半端になってしまい、失敗に終わるケースもあります。
上記のような失敗を避けるためにも、
- 担当者を巻き込みながら商品開発をする
- 商品の魅力が伝わるような勉強会の開催
など、日々担当者とコミュニケーションを取るよう心がけてください。
失敗要因⑪:全てを外注する、またはすべてを内製化する
何でも外注してしまう、もしくは何でも内製化してしまうケースは、失敗に繋がりやすいです。
まず、何でも外注してしまうケースの場合は、責任の所在がどこにあるか分からず、責任の押し付け合いになることがあります。
各担当ごとに最善は尽くしていても、横軸で全体を統括できる人がいなければ、最適な施策を打つことはできません。
こぼれたボールに対処することができるCOOやCMOのポジションは、内製化した方がよいでしょう。
逆に、何でも内製化してしまうケースでは、担当者が日々の業務に追われ、プラスアルファの施策や、各施策ごとの検証がおざなりになってしまいます。
内製化をすることで、競争優位性を保つことができる領域に関しては、自社で行ったほうがよいですが、そうでない場合は、どんどん外注してプロを活用するべきです。
自社のコアとなる部分は内製化し、それ以外は外部リソースを活用しましょう。
失敗要因⑫:値下げキャンペーンに頼った販売を続ける
中長期的にみると、値下げキャンペーンに頼った販売を続けることが失敗に繋がるケースがあります。
2ヶ月に一度、半額キャンペーンやカムバックキャンペーン、再トライアルキャンペーンなど、常に何らかのキャンペーンがある状態が続くと、キャンペーン時しか売れなくなってしまいます。
とりわけアフィリエイトなどで販促を行うと、Web上にキャンペーン情報や最安で買う方法などの情報が記載されるため、通常価格で購入するユーザーがみるみる減っていきます。
その後、プロモーションを行う際も『価格訴求』でしか売れなくなってしまうという悪循環に陥ってしまうため、キャンペーンを行う際は、十分な注意が必要です。
- 他の商品へのクロスセルに繋がるようなセット売りやお試し品をお付けする仕様を検討する。
- 期間限定で行い、期限を明確にする。
- 各キャンペーンごとに異なるオファーやベネフィットを用意する。
※新春、夏限定などで区切るものの、同じキャンペーン内容だとユーザーも気づきますので、徐々にCVRの定価を起こすため、キャンペーンごとに異なるオファーやベネフィットの用意が吉。 - キャンペーンを実施するチャネル or 広告媒体を絞る。
- 値下げキャンペーンは最も訴求度が強い内容なので、最終手段として活用する。
D2Cでは、販売を開始してから、値段や売り方の変更をすることは往々にしてあります。
価格訴求に頼りすぎないよう、十分に留意してキャンペーンを行うようにしましょう。
失敗要因⑬:無計画に商品を作りすぎてしまう
無計画に商品数を増やすことは、D2Cブランドの失敗要因の一つです。
特に、市場の傾向や消費者ニーズに基づかない商品開発は、一時的な売り上げ増加には繋がるかもしれませんが、長期的には利益率の低下や運営の複雑化を招きます。
商品数が増えることで、売り上げは一時的に増えますが、粗利が減ってしまうという状況はよくあります。
商品を販売するためのLP・バナー制作、コピーライティングなどの業務に時間を割く必要があるため、メインである既存商品に影響が出ることも考えられます。
同梱物や資材などの在庫管理も煩雑化することで、物流担当の業務が増えることも覚悟してください。
商品ラインナップの拡大は慎重に行い、既存商品との親和性が高く、市場ニーズに合致するものに焦点を当てて商品開発を進めましょう。
『美容液』を開発した後に、『化粧水』と『乳液』を開発する
失敗要因⑭:卸売りを外注している
卸売りを外注する際のリスクとして、不利な契約条件や販売価格の取り決めが挙げられます。
外注すること自体は、なんら問題無いのですが、卸売りの契約がD2C事業者にとって不利な場合があるため、失敗要因になりがちです。
また、一番怖いのは、販売価格に対する取り決めで、卸売りをする以上、Web上で販売価格を大幅に下げられてしまうと、卸売りで売れづらくなるため、価格を柔軟に変更できない場合があります。
そうなると、Web上でプロモーションをする際に、施策の打ち手が少なくなったり、現状の売り方を変えることもできなくなってしまいます。
D2Cでは、2ステップで販売したり、おまとめ定期売りをしたりと、販売手法を転換しながら勝ちパターンを探すことが多いため、現状の売り方を変えることができないのはかなりの損失です。
卸売りを外注する際は、契約条件を慎重に検討し、可能であれば自社での取り組みを優先することをおすすめします。
まとめ
この記事では、D2Cブランドを立ち上げる際に失敗する理由を14個挙げ、改善策を併記しました。
D2Cは、ECモールでの販売とは異なる売り方や、運営ノウハウが必要です。
ベネフィットや独自性・世界観をしっかりと構築し、濃いファンの創出は欠かせません。
事前に知っておけば避けることができるケースも多いので、失敗要因をしっかり把握しておきましょう。
D2C立ち上げの一連の流れについては下記に記載しておりますのでご一読くださいませ。