ポップアップストアは、今日のデジタル時代において、ブランドが直接消費者と繋がるための革新的な方法です。
この限定的なリテール体験は、ブランド認知度の向上、テスト販売、新作発表など多様な目的を果たします。
この記事では、ポップアップストアの基本から、2024年最新の他社事例、さらには出店時の重要ポイントまでを網羅し、事業者がリアルの顧客接点を最大限に活用するための実践的なアドバイスを解説します。
ポップアップストアとは
ポップアップストアとは、短期間のみ開催される期間限定型の店舗です。
ポップアップという名前の通り「突然現れる店」という意味合いが強く、従来の期間限定ショップと異なり「イベント性」や「アミューズメント性」が重視される傾向があります。
ショッピングモールの催事場や、空き店舗のほか、駅やイベントスペースで開催されていることが多いです。
最近では、b8ta(ベータ)のようなD2Cブランドの百貨店のようなポップアップストアも人気で、ベンチャー・大企業問わず賑わっています。
ポップアップストアの強みは「期間限定」であることです。
出店期間が過ぎると二度と訪れることができないため、話題性も高めやすく、ブランドのプロモーションとしての利用価値が非常に高いといえます。
2024年最新!ポップアップストアの実施事例
2024年最新のポップアップストアの実施事例について5つほどご紹介します。
各ポップアップストアごとの参考にしてほしいポイントもぜひ見てみてください。
①YOKE(ジャンル:ファッション)
出典:https://www.fashionsnap.com/article/2024-01-25/yoke-popup-rigl/
運営会社:Spiber株式会社
- ブランド概要:YOKE(ヨーク)は、2018年秋冬シーズンにスタートしたブランド。
ブランド名は「繋ぐ」「絆」「洋服の切り替え布」などの意味を持ち、ブランドのコンセプトにも通じている。 - 開催日時:2024年1月26日〜28日
- ポップアップストアの概要:YOKE galleryにて、フランスの画家マルタン・バレにインスピレーションを受けた春夏コレクション展開。
- 参考ポイント:アートとファッションの融合によるブランドイメージの強化
②LOVOT(ジャンル:ロボット)
出典:https://lovot.life/blog/article/7h2c1llajmw/
運営会社:GROOVE X 株式会社
- ブランド概要:2018年12月に日本で発表されたAI ロボット。
翌年の出荷以降、2023年現在では約1万体以上が日本の全国各地で家族の一員として暮らしている。 - 開催日時:2024年2月、日程詳細は上記Webサイト参照
- ポップアップストア概要:日本全国で、触れ合い型ロボットLOVOTとの交流体験提供。
- 参考ポイント:先進技術の体験型展示を通じた製品認知の拡大
③rihka(ジャンル:コスメ)
出典:https://rihka.com/blogs/news/20240118-popup
運営会社:株式会社newn
- ブランド概要:rihka(リーカ)は、ヘアメイクアップアーティストの松田未来がプロデュースするコスメティックブランド。2020年6月にデビューし、ネイルポリッシュやアイポリッシュを展開。
- 開催日時:2024年1月24日〜1月30日
- ポップアップストア概要:阪急うめだ本店での新保湿ケアシリーズ「skin hug」先行販売。
- 参考ポイント:高級百貨店を利用したターゲット層への直接的アプローチ
④五等分の花嫁∽(ジャンル:アニメ)
出典:https://www.muzzle.co.jp/gotoubun-no-hanayome/hands20231227/2nd/
運営会社:講談社 /「五等分の花嫁∽」製作委員会
- ブランド概要:貧乏な男子高校生が落第寸前の五つ子の家庭教師となり、彼女たちを無事に卒業させるために奮闘するラブコメディ。2022年12月時点で累計発行部数は2000万部を突破。
- 開催日時:2024年2月9日〜25日、各地域の店舗で開催
- ポップアップストア概要:人気アニメ「五等分の花嫁」関連グッズの展示販売。
- 参考ポイント:コンテンツの人気を活用したファン層への訴求
⑤君となら恋をしてみても(ジャンル:ドラマ)
出典:https://www.manga10.com/event/2610
運営会社:株式会社TORICO
- ブランド概要:世話焼き同級生×甘えた転校生、江ノ島を舞台に描かれる男子高校生たちのピュアでもどかしい恋のお話。
- 開催日時:2024年2月14日〜3月13日
- ポップアップストア概要:マンガ展 渋谷にて、ドラマ&原作の展示とオリジナルグッズ販売。
- 参考ポイント:映像化された作品の拡張展示を通じた新規ファン層の獲得
ポップアップストアを出店するメリット
ポップアップストアを出店するメリットは、下記の5つが挙げられます。
- ランニングコストの低減とテストマーケティング
- ブランド認知度の向上
- 顧客と直接コミュニケーションがとれる
- SNSでの情報拡散が期待できる
- 出店実績を明記(二次利用)できる
1つずつ詳しく見ていきましょう。
メリット➊:ランニングコストの低減とテストマーケティング
ポップアップストアのメリットとして、ランニングコストの低減とテストマーケティングの機会があります。
これは、一時的な出店により、通常の店舗運営に比べて必要な投資が少なく、リスクを抑えることができる点に起因します。
特に新しいブランドやオフライン市場への進出を検討している企業にとって、顧客の反応を直接観察し、市場の傾向を把握できるテストマーケティングの場としての価値は計り知れません。
また、成功すれば、将来的なオフライン店舗の展開に向けた貴重なデータと経験を得ることができます。
メリット❷:ブランド認知度の向上
ポップアップストアの出店は、ブランド認知度の向上に大きく貢献します。
特にD2Cブランドでは、ブランドの知名度を高めることが売上向上のカギとなります。
ポップアップストアは、オンラインだけでは届かない新しい顧客層にアプローチする絶好の機会を提供します。
目に見える実店舗は、新しい顧客に対してブランドを気軽に体験してもらうきっかけとなり、さらに、その魅力を感じてもらえれば、SNSや口コミを通じてブランドが広まる可能性も高まります。
効果的な運用により、ポップアップストアは新たな顧客層の獲得とブランド認知の拡大に直接つながるでしょう。
メリット❸:顧客と直接コミュニケーションを取ることができる
ポップアップストアのメリットとして、顧客との直接的なコミュニケーションが可能である点が挙げられます。
特にデジタルD2Cブランドにとっては、オンライン上の一方的なやり取りから脱却し、顧客のニーズや好みに合わせた対面での接客を通じて、顧客満足度を高めることができます。
また、この直接コミュニケーションは、顧客の細かな要望を理解し、商品開発やサービス改善のための重要なフィードバックをもらうチャンスです。
ポップアップストアは、オンラインでは得られない貴重な顧客との繋がりを築く機会となるのです。
メリット❹:SNSによる情報拡散が期待できる
ポップアップストアは「期間限定」であることから話題性を高めやすく、SNSで拡散されやすいというメリットがあります。
SNS拡散によって多くの人に自社のD2Cブランドに興味をもってもらえれば、自社サイトへの流入数アップも期待できるでしょう。
D2Cブランドにおいてマーケティングを考えている方であれば、SNSの重要性はよく理解できるかと思います。
多くの人に注目されるようなイベント性の高いポップアップストアを出店できれば、広告塔としての効果は非常に高くなるといえるでしょう。
SNS拡散を目的としたポップアップストアの成功事例としては、以下のようなものがあげられます。
- ポップアップストア内に、映える写真を撮るブースを用意する
- スタッフがお客さまと商品が写った写真撮影を行ってくれるサービスを用意する
- 有名人を招く
- 内装にこだわり世界観を演出する
- 場所とアイテムでギャップを作り出す(和×海外ブランドなど)
- SNS投稿で割引や支払いができるサービスをつける
最近のD2Cでは、いかに顧客を巻き込んでUGC(口コミ)を発生させるかが重要なため、SNSでの情報拡散が期待できるのは大きなメリットといえます。
上記のような工夫でポップアップストアに「話題性」を取り入れることで、バイラルマーケティング(口コミを利用した拡散手法)としての効果を十分に発揮してくれるでしょう。
メリット❺:出店実績を明記(二次利用)できる
『出店実績』をさまざまな箇所に明記できるようになるのも、ポップアップストアを実施するメリットのひとつです。
D2C事業では、Web上での集客に欠かせないLPへ仕様できる素材・コンテンツが非常に重要です。
理由として、顧客はサイトに記載された「売上NO.1!」「累計売上〇個!」などの情報を見てブランドの価値や信頼性を判断するためです。
出店実績の記載があれば、ユーザーは「ネット上だけの怪しいビジネスではなさそう」と感じられ、購入の決め手になる可能性が高まります。
よって、ポップアップストアを開催することにより『出店実績』をLPでも二次利用できるようになるため、ブランド・サイトの信頼性を高め、CVR向上をはかることができます。
ポップアップストアを成功させるための6つのポイント
ポップアップには多くのメリットがありますが、メリットを実感するためには、しっかりとした戦略が求められます。
ただなんとなく店舗を運営するだけでは、存在感を示せないまま期間が終了してしまうでしょう。
まずは、以下のようにポップアップストア出店の目的を明確にすることが大切です。
- ブランドの認知度を上げる
- 店舗出店に向けテストマーケティングをおこなう
- 「売れる時期」を狙って短期間の売上アップを狙う
- リアルな感想やニーズの聴取
認知度アップが目的ならば、SNSに拡散されやすい工夫をするなど、目的に応じて必要な戦略を立てましょう。
なお、ポップアップストアが失敗する理由は、目的がはっきりしていないことのほか、立地や戦略不足(人目を引かない)などがあげられます。
そこで、知名度がないD2Cブランドが、ポップアップストアを成功させるための6つのポイントをご紹介します。
- 目的に合った出店場所を選ぶ
- 出店時期を目的や業種に合わせる
- 一度で魅力を感じてもらえる商品を並べる
- ブランドの世界観を伝える
- 体験型のコンテンツを用意しておく
- ECサイトへ誘導するための工夫をする
1つずつ詳しく見ていきましょう。
ポイント➊:適切な出店場所の選定
ポップアップストアは、以下のようにさまざまな場所に出店されます。
- ショッピングモールの催事場
- 空き店舗
- 駅やイベントスペース
- レンタルスペース
- 関連する業界の店舗の一角を間借りする
ポップアップストアの出店場所選びは、ブランドの業種や目的に合わせて戦略的に行うことが重要です。
アパレルブランドなら購買意欲の高いショッピングモールが効果的で、小物販売ならカフェの一角なども選択肢になります。
また、意外性のある場所に出店することで話題性を高める手法もあります。
ブランドのターゲット顧客を考慮し、集客効果を最大化することがポイントです。
ポイント❷:出店時期を目的や業種に合わせる
売上アップが目的のひとつであれば、ポップアップストアの出店時期も重要です。
特に、飲食系のD2Cブランドであれば、その食品が売れやすい時期というものが存在します。
例えば、チョコレートであればバレンタイン、ギフトに贈りやすい食品であれば帰省時期など、「売れる時期」を狙い撃ちすることで、効率的に売上げアップを目指すことができるでしょう。
またアパレル業界で季節の新作発表が目的であれば、季節の変わり目が最適です。
スーツブランドであれば、卒業や就職の少し前である1~3月が最も購入されやすい時期といえるでしょう。
このように、業種によって売れる時期を見極めることも、ポップアップストアで売り上げを伸ばすうえで重要なポイントとなります。
ポイント❸:一度で魅力を感じてもらえる商品を並べる
ポップアップストアでは、どの商品を陳列するかも重要です。
ポップアップストアは多くの場合、新規顧客層を獲得することが目的のため、基本的に新規の客が多くなります。
新規で訪れた顧客をリピーターにするためには、一番に「その商品に魅力を感じてもらうこと」が重要です。
いくら内装や企画に力を入れようとも、商品に魅力を感じてもらえなければ、顧客との関係はそこで途絶えてしまうでしょう。
具体的には、以下のような商品を陳列することで、新規の客に魅力を感じてもらいやすくなります。
- 見た目が良い商品
- 値段が高すぎない商品
- その店舗でしか買えない商品(期間限定)
- ギフト用の商品
商品を手に取ってもらうため、第一に見た目(デザイン)が重要です。
また、ブランドを知らない人が購入に踏み切りやすくするためには、購入しやすい価格であることも大切です。
手に取ってもらい、なおかつ購入してもらうことで、ようやく商品の魅力を感じてもらえます。
また、期間限定商品は顧客に希少性価値を感じさせられますし、さらにギフトに贈りやすい商品であれば購入動機が生まれます。その人だけで完結せず、誰かに紹介してもらえる可能性も高まります。
このように、ポップアップストアでは、手に取ってもらう工夫(見た目)や、購入してもらう工夫(値段、限定品)などを考えながら、どの商品を陳列するかをしっかり吟味することが大切です。
ポイント❹:ブランドの世界観を伝える
ポップアップストアをマーケティングに利用する場合、どの業種でも共通して重要なポイントがあります。それは、「ブランドの世界観を伝えること」です。
理由として、D2Cブランドの成功のカギは、そのブランド独自の世界観を認知してもらうことであるためです。
「環境に優しい商品開発をしている」
「かっこいい大人に似合うブランドである」
など、成功しているD2Cブランドには、それぞれ独自の世界観があります。
ポップアップストア出店を通してブランドの世界観を伝えられれば、「こんなブランドなんだ」というイメージを顧客に植えつけられ、ブランドが広まりやすくなります。
どのD2Cブランドにも、顧客と共有したい世界観があるはずです。
「理念」と置き換えてもいいでしょう。
ポップアップストアは、そんな世界観を体感してもらう場所と捉えてください。
昨今の技術革新により、品質が良く安いものは市場にありふれています。
そんななかであなたのD2Cブランドを手に取って購買してもらうには、世界観や商品へのこだわりをしっかりと伝えることが大切です。
具体的には、ブランドのこだわりや製品のポイントを伝えられる体験イベントや展示などがあるとよいでしょう。
接客についても、販売実績にこだわる必要はありません。
それよりも、1人でも多くの顧客と接し、ブランドに込められた思いを伝えられるよう意識してみてください。
D2Cブランドにとって、販売の場はあくまでも自社ECサイトです。
「サイトを訪れてみたい!」と顧客に思わせるように、いかに世界観を伝えるかの戦略を立ててみてください。
ポイント❺:体験型のコンテンツを用意しておく
D2Cブランドのポップアップストアでおすすめなのが、体験型のコンテンツです。
例えば、サンプル品の試食や試着などが挙げられます。
製品の良さについて、どれだけ丁寧に言葉で伝えようとしても、限界はあります。
よって、「実際に体験してもらうこと」が、もっとも効率的なアピールになるでしょう。
商品販売スペースよりも、体験スペースやワークショップスペースを広くとるのも効果的な方法です。
実際に手に取り使用することができれば、商品の魅力をダイレクトに伝えることができます。
またこうした体験は、販売促進にもつながります。
人には、相手から受け取ったものに対しお返しをしたいと感じる心理(返報性の原理)があるため、「体験させてもらったから、購入してみようかな」という気持ちになる可能性が高まるのです。
D2Cブランドを購買するとき、商品を買っているのではなく、体験を買っている場合は多く存在します。
・サンプル品をその場で使用してもらう
・SNSに投稿したくなるような、体験型イベントを用意する
上記のようなコンテンツを用意することで、劇的にポップアップストアのマーケティングとしての効果を高められるでしょう。
ポイント❻:ECサイトへ誘導するための工夫をする
ポップアップストアが成功すれば、ブランドに興味を抱いてくれる顧客は増えるでしょう。
しかし、何もしなければそのときだけの関係となり、ECサイトまで訪れてもらえる可能性は低くなってしまいます。
そこで、ECサイトへ誘導するための工夫が重要になります。
以下のような工夫を施し、獲得した顧客を確実に自社サイトへと誘導しましょう。
- ストア限定のECサイト専用クーポンを配布する
- ポップアップストア限定アイテムをECサイト上で販売する
- 購入商品と一緒にQRコードを記載したフライヤー(チラシ)を入れる
- 会員登録で割引きにする
ポップアップストアのイベント感は、訪れる人をワクワクさせるものです。
ちょっとした工夫で、ワクワクした気持ちのまま、自社サイトへと誘導できるようにしましょう。
まとめ
ポップアップストアは一時的な期間限定の店舗で、D2Cブランドに多くのメリットを提供します。
そのメリットには、ランニングコストの抑制、ブランドの認知度向上、顧客との直接コミュニケーション、SNSでの情報拡散、出店実績の二次利用ができる点などが含まれます。
成功のためには、出店場所と時期の選定、魅力的な商品の陳列、ブランドの世界観伝達などのポイントを考慮する必要があります。ぜひ自社がポップアップストアを出店する際は参考にしてみてください。