D2Cビジネスを立ち上げたものの、継続率が悪くどうにかしたい…、というご相談をいただく機会が増えています。
D2Cの最初の壁である『集客』は上手くいったものの、その後『広告宣伝費』がかさみ、顧客の継続的なリピート (CRM) にお悩みの方も多いのではないでしょうか?
新規顧客の獲得は、継続顧客からの売上よりも、5倍の費用がかかると言われています。
継続的なリピート (CRM) を整えなければ、穴の開いたバケツに水を入れ続けるようなものです…。
この記事では、継続率を上げるために、具体的にどのようなCRM施策を行えばよいのかを解説します。
CRM施策に注力した方がよい理由
まず初めに、なぜCRM施策に注力した方がいいのか、その理由を解説します。
理由①:競合の激化・市場の縮小
まず挙げられるのは、競合の激化と市場の縮小でしょう。
以前は、D2Cブランドを立ち上げる企業はそこまで多くなく、大きな市場を少ないプレイヤーで取り合っているという状況でした。
しかし昨今では、D2Cブランドが乱立し、どの企業もCPC・CPAの高騰、LTVの減少に悩まされています。
また、日本の人口は年々減少し続けているので、顧客になりうるターゲットは、今後ますます少なくなっていきます。
新規顧客を獲得するハードルは年々上がっているため、一度ご縁をいただいた顧客の継続率を延ばすことが、重要なミッションとなります。
理由②:既存顧客の継続率を向上させる方が、費用対効果が高い
最近ではインフルエンサーを活用した新規獲得施策により、これまでよりも低いCPAで顧客を獲得しているD2Cブランドも多くみられます。
しかし、顧客獲得の主な手段が『広告運用』という企業が多いのが現状です。
D2Cブランドは、最初に多くの予算を投じて新規顧客を獲得し、継続して購入してもらうことで、ようやく採算が合うビジネスモデルです。
(例) 初回トライアルまたは初回割引を行い、ROASが100%を切り、2・3回目を購入いただくことで、ようやく黒字転換する。
1人の新規顧客を獲得するために、商品の定価よりも高い金額を投資することが多いため、新規顧客を獲得し続けることは一定のリスクがあります。
競合他社が参入していない状況では、高いLTVが維持できるため、広告予算の回収が1年以上先でも経営が成り立っているケースも多くありました。
しかし昨今では、早急に広告費の回収をしなければ採算が合わず、以前よりも継続率の向上が重要となってきています。
理由③:新規で獲得できる層は限られている
現状、新規顧客を上限なく取り続けることができていたとしても、いずれ獲得できる件数はアッパーに達し、費用対効果が悪化します。
商品のコンセプトや、提供する価値を求めるユーザーニーズから逸脱した層を獲得してしまうと、結果CPAは高騰し、LTVが下がってしまいます。
ですので、売上を伸ばし続けるためには、獲得の余地があるターゲット層の中でいかにリピートしてもらい、満足度の高い顧客体験が提供できるかが肝になってくるのです。
EC・D2Cで継続率を高めるための2つの考え方
継続率を上昇させるためには、大きく分けて2つの考え方があります。
- 継続促進 (顧客満足度を上げ継続してもらう)
- 解約阻止 (顧客に解約を思いとどまらせる)
継続促進
例えば、DM・メルマガ・LINEを活用することで、顧客への満足度向上を図ります。
また、商品満足だけでなく、企業のファンになってもらえるような施策を実施するという考え方もあります。
このフェーズまで来ると、商品・サービスに関係なく顧客がつくので理想的です。
継続促進の施策は、基本的に即効性はありませんが、継続的な効果をもたらすことが可能です。
また、上記施策を行う上でのポイントとしては、
- 顧客とのタッチポイントでの期待値コントロール
- コンテンツの内容
が重要となってきます。
解約阻止
オファーや解約電話のスクリプト改善・メール対応での解約阻止がメインとなります。
即効性はありますが、小手先感のある施策です。
手っ取り早く改善したいのであれば、こちらを優先的に検討しましょう。
大前提として、継続率の向上やCRM施策は、単発ではなく長期で考える必要があります。
ブランディング、顧客とのタッチポイント、ベネフィット、顧客の不・ニーズを解決できているか、LTVなどを総合して考えなければ、長期的な売上最大化には繋がりません。
EC・D2Cで取り組むべきCRM施策一覧
取り組むべきCRM施策の一覧を、下記にまとめました。
- 解約阻止・防止
-
- 電話解約阻止のためのトークスクリプト作成
- メール解約阻止のためのメールテンプレート作成
- 継続促進
-
- クレジットカード払いの選択率を上げる
- メルマガ・ステップメールの改善
- LINEアカウントの運用
- オファー品の改善
- 期待値コントロール
- 同梱物・DMの見直し
- アプリと顧客情報のAPI連携
- 会報誌
- 会員制度、アンバサダー制度
- SNS運用・ライブ配信
- その他
-
- 各施策ごとの訴求の見直し
- 自社コンテンツ制作、ブログなど
- 休眠キャンペーン施策の見直し
優先順位が高いものは、解約阻止・防止 のための施策です。
即効性が高く、改善することで売上の増加に大きく貢献します。
解約阻止・防止の最初のステップとして『解約導線の確認』を行いましょう。
- 電話解約阻止のためのトークスクリプト作成
- メール解約阻止のためのメールテンプレート作成
解約を電話で受け付けている場合は、解約防止スクリプトを作成しましょう。
外部のコールセンターに解約対応を依頼している場合は、直接コールセンターに赴いて教育することで、どのオペレーターも同様の成果を出せるようになります。
メールでの解約防止を行う場合は、解約理由別の返信スクリプトを用意しましょう。
また、解約時に詳しいアンケート・ヒアリングをすることができれば、商品の品質向上にも繋がります。
なお、解約受付窓口を電話のみして、解約率を下げるという手法もありますが、顧客に不快な思いをさせる可能性があり、おすすめはしません。
企業への不信感増加だけではなく、オペレーターの負担が大きくなります。
その次に、継続促進 の施策を行います。
継続促進をするための施策で、費用も抑えられ、大幅な継続率上昇・LTVの増加に繋がるのは、クレジットカード払いの選択率を増やすことです。
- VISA・マスター・JCBのようなカードブランドの種類を増やすという意味ではなく、クレジットカード払いを選択するユーザーを増やすという意味
支払い方法を『後払い』にするか『クレジットカード払い』にするかで、商品にもよりますが、LTVの差分が10,000円ほど出ることもあります。
私が過去に携わっていたある商品では、カード払いの選択率を引き上げただけで、売上が1.5倍になったというケースもありました。
小手先の施策ではありますが、売上へのインパクトは非常に大きいです。
クレジットカードの選択率を高めるための具体的な方法については、直接お問い合せください。
それ以外の 継続促進 の施策については、各企業の達成したいゴール・予算・リソースごとに、実施する優先順位が異なってきますので、順不同とします。
- メルマガ・ステップメール (継続促進を目的とした教育メール) の改善
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制作費用などがかさまず、スピード感を持って成果にインパクトしやすいのが特徴です。
※ 数値計測やABテストが可能なメール配信ツールがあることが前提 - LINEアカウントの運用
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LINE公式アカウントを活用した、ステップメールを実施します。
LINEチャットボットを活用した、細かい管理もおすすめです。 - オファー品の改善
-
小手先の方法ではありますが、オファーはF2やF3などの引き上げに効果的です。
在庫をオファー品として上手く活用することができれば、一石二鳥の施策となります。 - 期待値コントロール
-
長期的に考えれば、最も意識をしなければいけないことの1つです。
顧客の期待値と得られるベネフィットが乖離しないことが大切です。 - 同梱物・DMの見直し
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同梱物・DMの改善により、数%の継続率改善が望めるケースは多いです。
別送DMの場合、費用がかさんでしまうため、同梱物の改善の方が優先度が高いです。 - アプリと顧客情報のAPI連携
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自社のアプリを開発している場合は、顧客ごとにパーソナライズした情報をお届けするよう、API連携しましょう。
- 会報誌
-
会報誌などの施策を実施する場合は、費用対効果をLTVで見る場合がありますが、個人的には、LTV回収でしか会報誌の採算が合わないのであれば、実施すべきでないと考えています。
※会報誌はかなりの投資になるため、一発回収できるよう設計するのがよい。
補足LTVは、会報誌を始めた当初に立てた予測通りとなる可能性は低いです。
希望的観測で甘く見ることが多く (とりわけ施策担当者は数字をよく見せたがるため) 施策終了後の経過を見ると赤字だった、というケースは多々あります。
数字計測も年間で見る必要があるため、疎かになりがちです。
とりわけ社員のジョブローテーションが多い会社は、注意が必要です。 - 会員制度・アンバサダー制度
-
会員制度やアンバサダー制度を活用し、コミュニティを作ることで継続率の促進が望めます。
ユーザー同士が交流し合うようなコミュニティを形成できるかどうかがポイントです。 - SNS運用・ライブ配信
-
企業のSNSをグロースさせるのは難易度が高いですが、上手く活用することで、口コミやUGCを発生することが可能です。
口コミやUGCによって、継続率向上が見込めますので、ぜひ検討したい施策です。
ここまで継続促進施策の一例を、ざっとご紹介させていただきましたが、会社の特色や商材に合わせて考えられる継続促進の施策は様々です。
上記以外にも無限に考えられますので、今必要な施策は何かを考え、見極めることが重要です。
各施策のインパクト・コスト・スピード感の関係を、下記にまとめました。
成果インパクト | コスト | スピード | |
---|---|---|---|
電話解約阻止トークスクリプト | 中 | 小 | 早 |
メール解約阻止テンプレート | 小~中 | 小 | 早 |
クレジットカード選択率の向上 | 大 | 小~中 | 早 |
メルマガ・ステップメールの改善 | 小~中 | 小 | 早~普通 |
LINEアカウントの運用 | 中 | 中 | 早 |
オファー品の改善 | 大 | 中 | 遅 |
同梱物の見直し | 大 | 中 | 普通 |
DM (別送) の見直し | 中 | 高 | 普通 |
アプリと顧客情報のAPI連携 | 中 | 高 | 遅 |
会報誌 | 大 | 高 | 遅 |
会員制度・アンバサダー制度 | 大 | 中 | 普通 |
SNS運用・ライブ配信 | 大 | 中 | 遅 |
縦軸:費用が少額で実施できるか?多額が必要なのか?
横軸:大きな効果をもたらすか?小さな効果なのか?
でマトリクスを作成しています。
- あくまで下記は参考程度にと考えてください。
- 会社や商材によって、向き不向きもあります。
- 商材特性などによって、効果は前後します。
- 効果が「小」となっていても、やり方によっては絶大な効果をもたらす場合もあります。
継続率改善による、具体的な売上増加幅シュミレーション
継続率の促進や、CRM施策をないがしろにしている企業は多く存在します。
新規顧客獲得に尽力しすぎて、継続施策が疎かになってしまった、というのは現場でよく起こりがちな問題です。
では、継続率を上昇させることで、具体的にどれくらいの売上増加が見込めるのかを『ジェネ化粧品 (仮)』を例にシュミレーションしてみましょう。
様々なCRM施策を行った結果、継続率が改善され、平均継続回数が 3回 → 3~4回となった場合はどうでしょうか?
CRM施策実施前 | CRM施策実施後 | |
---|---|---|
販売商品 | オールインワンジェル | オールインワンジェル |
定価 | 7,000円 | 7,000円 |
売り方 | 定期コース (初回のみ 20%OFF) | 定期コース (初回のみ 20%OFF) |
平均継続回数 | 3回お届け | 3~4回お届け |
LTV | 19,600円 | 22,400円 |
年間新規顧客数 | 10,000名 | 10,000名 |
年間売上 | 1億9,600万円 | 2億2,400万円 |
- 分かりやすいよう設定を簡略化しました
- LTVは、1年間の顧客価値で見ています。
平均継続回数が3~4回になっただけで、年間2,800万円の売上増加が見込め、売上に大きくインパクトします。
現状の販売数や売上が多いほど、大きな成果に繋がりますので、CRM施策には注力していくべきでしょう。
メルマガ改善の流れ
このトピックでは、CRM施策の1つの選択肢である『メルマガ』について、具体的な改善のステップを、下記に記載しました。
大きく分けて、7つのステップがあります。
- 解約理由の確認 ➡ 解約理由を無くす案内
- 継続理由の確認
- 顧客に刺さる訴求・関心ごとの発掘
- メルマガの到達率・開封率の改善
- タイトルや見出しで強い訴求が使われていないか確認
- メルマガの同時A/Bテストを行う
- クロスセル目的 ➡ 継続・満足度向上目的のメルマガに変更
では、1つずつ確認していきましょう!
まず最初に確認すべき点は、解約理由です。
顧客はなぜ解約という決断に至ったのか?
その理由を把握しなければ、継続率向上のためのステップメールを組むことはできません。
もし細かい分析が可能であれば、日別の解約理由を確認してください。
解約理由 (お届け後5日):とりあえず試したかっただけ
解約理由 (お届け後7日):肌の潤いは実感するがハリまでは感じない
解約理由 (お届け後10日):シミが改善した気がしない
解約理由 (お届け後10日):シワが改善した気がしない
例えば、日別の解約理由を確認したときに、上記のような理由だったとしましょう。
新規顧客を獲得する際に、『シミ』『シワ』を訴求していたとしたら、解約理由には上記のようなものが想定されます。
日別の解約理由を確認したら、解約が発生する前に、解約理由を無くす案内をステップメールに組み込みましょう。
使い心地はいかがでしょうか?もし肌の潤いやハリを実感しているのでしたら、お使いの化粧品は顧客の肌に合っているかと思います。本格的なお悩み解決には、あと1ヶ月ほどかかりますので…(以下略)
…というような、期待値コントロールを心掛けた文章を作成するイメージです。
解約理由を把握したら、次は継続理由を確認しましょう。
商品を長く愛用している顧客にアンケートを依頼し、継続理由にどのようなものが多いのか、生の声をまとめていきます。
継続理由を明確化することで、訴求すべき内容・ベネフィットも必然的に決まっていきますので、非常に重要なステップです。
とりわけ定期コースを採用している場合は、最初の1~3ヶ月を、解約せずいかに継続してもらうかが重要なポイントとなります。
商品を使うと、その後どのようなベネフィットが得られるのかを、顧客に理解してもらう必要があります。
そのためには、顧客に刺さる訴求・関心ごとを発掘しましょう。
メルマガを送る際には、商品のPR感をあまり強く出さず、記事コンテンツのような設計をするとよいでしょう。
売り込み感をなるべく無くして、ナチュラルに伝えられる文章設計を心がけるのがポイントです。
メルマガの到達率・開封率などの主要数値を、正確に把握しましょう。
多くの企業では、マーケ担当者が上記の数値を把握していません。
商品を長く愛用いただくためには、さまざまな指標を把握し、改善していく必要があります。
そもそもメールが到達していなければ、この時点でアプローチできる母数が大幅に少なくなってしまいます。
とある企業では、メルマガが迷惑メールに分類され、到達率が20%となり ほとんど機能していないケースもありました。
HTMLメールにて作成することで、開封率を計測することが可能です。
様々なメールタイトルでA/Bテストを繰り返し、開封率が高い文言を見つけましょう。
タイトルや見出しに、強い訴求や怪しい内容が記載されている場合、顧客側からブロックされてしまったり、迷惑メールに振り分けられてしまう可能性が高まり、メールアドレスの評価が下がります。
メールアドレスの評価が下がると、顧客へのメール到達率も下がるため、注意が必要です。
判断基準としては、広告を打つ際に媒体審査に通るかどうか?という点を目安にしてみると良いでしょう。
2種類のメルマガを作成し、効果計測を行いましょう。
メルマガに関しても、広告運用やクリエイティブと同じく、PDCAを回すべきです。
まず初めに、訴求軸を変えたものでA/Bテストを行い、最適な訴求を探します。
おおよその方向性が決まった後、次は細かいA/Bテストを行います。
例えば、メルマガの内容は同じでも、順番を変更しただけで、完読率・継続率が高まるケースもあります。
現状の魅せ方は本当に適切なのか?常に疑って改善していきましょう。
メルマガのステップメールを作成する際に、クロスセルに力を入れている企業が多く見られますが、まずは継続・満足度向上に繋がるメルマガ を意識した方が無難です。
2~3回目購入の際は、解約される可能性が高いフェーズになります。
- 商品特性や使い方
- 商品を使い続けることで得られるベネフィット
- 顧客満足に繋がるような内容
…などを中心に文章を考えるのがベストです。
クロスセルを行いたい場合は、メルマガのステップメールで行うよりも、サンクスページ上・会報誌・別途キャンペーンなどで行いましょう。
また、オファー品を提供できる場合は、『2回目、3回目にオファー品があること』を顧客に意識させることで、一時的ではありますが継続率は向上します。
繰り返しになりますが、継続率の向上やCRM施策は、単発ではなく総合的に考えることが大切です。
- 自社商品のブランディング
- 顧客との最初のタッチポイント
- 商品がもたらすベネフィット
- 顧客の不・ニーズ
- LTV
CRM施策をスポットで行うだけでは、継続率を大きく向上させることは難しいです。
とはいえ「根本からすべて組み立て直すなんて無理!」というのが現場の声だと思いますので、状況やフェーズによって改善スケジュールを組み、毎月細かくPDCAを回しましょう。
そして、CRM施策は 数値の分析を都度計測していくことが大切です。
日々の業務に忙殺されていると、実施した施策を途中で放置してしまい、効果の有無を判断できなかった…とならないよう、次の施策に繋げていくことを意識して取り組みましょう。
継続率を向上させる一番の方法は、価値のある商品を届けること
この記事では、継続率を上げるためのCRM施策について解説しました。
ですが、根本的に継続率を向上させるためには、価値のある商品/サービスを提供することが最も大切です。
顧客の不を解決する価値のある商品であれば、おのずと継続率は高い水準を維持できるでしょう。
また、顧客との最初のタッチポイント、訴求内容、集客チャネルによっても継続率は大きく影響しますので、
根本的な継続率改善のためには『商品設計』『集客』『訴求ポイント』なども合わせて見直しましょう。