リスティング広告は、適切なアカウント構成を作成することで、売上や利益を大きく増やすことが可能です。
リスティング広告の成果に影響を与える要素はいくつかありますが、リスティング広告で売上を増やせていない原因がアカウント構成となっているケースは珍しくありません。
このような場合、アカウント構成を変更するだけでも、リスティング広告の成果が大幅に改善する可能性があります。
また広告配信の開始当初から、成果を出しやすいアカウント構成を作成することが出来れば、多くの売上や利益を獲得できる可能性を高めることが出来ます。
アカウント構成にはキャンペーンや広告グループなどの複数の要素が含まれており、それぞれの要素を上手く使って『成果の出せるアカウント構成』を作成するためにはコツがあります。
今回はアカウント構成に関する基礎的な知識や各要素の役割、そしてアカウント構成の作成方法などについて説明します。
この記事では、リスティング広告のアカウント構成について学びたい方へ、
- アカウント構成が成果に影響を与える理由
- アカウント構成の要素ごとの割合や設定可能な項目
- 成果が出せるアカウント構成のポイント
について解説します。
アカウント構成が成果に大きく影響する理由
アカウント構成に問題がある場合、『検索キーワードと広告とランディングページのマッチング』が出来ていないため、リスティング広告の成果が大きく悪化します。
また、検索キーワードに対して、不適切な広告やランディングページが配信されている状態だと、成果を改善するための効果検証も正しく行うことが出来ません。
アカウント構成に問題がある場合の大きなデメリットは、次の2つです。
- 検索キーワード(検索ニーズ)に対して適切なコミュニケーションが取れない。
- 間違った評価によって売上獲得のポテンシャルが小さくなる。
1つずつ解説します。
検索キーワード(検索ニーズ)に対して適切なコミュニケーションが取れない
リスティング広告のアカウント構成に問題がある場合、ユーザーの検索キーワードである『検索ニーズ』に対して、『適切な広告やランディングページ』を配信することが出来ないため成果が悪化します。
D2Cであれば、取り扱う商品の種類だけでなく、ユーザーが商品を購入することで解消したい悩みや不安などは様々で、検索キーワード(検索ニーズ)もそれぞれ異なっています。
例えば、化粧水を探しているユーザーには化粧水の広告を配信するべきであり、美容液の広告を配信してもクリックされにくく、クリックされたとしても購入してもらえる可能性が低いため、広告の費用対効果が悪化します。
また、化粧水の広告を配信出来ているとしても、「化粧水を購入したい!」とすでに購入意欲が高いユーザーに対して、”化粧水の有効成分とは?”のような購入意欲を高めるための広告やランディングページを配信しても、コミュニケーションとしては少し不適切です。
ユーザーの探している商品や、叶えたい目的に合わせて、どの広告やランディングページを配信するべきか考える事が大切です。
間違った評価によって売上獲得のポテンシャルが小さくなる
不適切なアカウント構成でリスティング広告の運用をしている場合、中長期的な観点で考えると売上獲得のポテンシャルが低下するデメリットがあります。
ユーザーの検索ニーズに対して、不適切な広告やランディングページを配信している場合、検索キーワードのコンバージョン率や広告のクリック率を正しく評価することが出来ません。
リスティング広告の運用では、配信実績を確認した際にコンバージョン率が低く費用対効果が悪い検索キーワードがあれば、広告の配信ボリュームを抑制する調整を行います。
このような調整を行うことで、リスティング広告の費用対効果が徐々に改善することが出来ます。
しかしこの調整は、『検索キーワードに対して、適切な広告やランディングページが配信できている』という事が前提となっています。
不適切なアカウント構成で運用している場合は、この前提が崩れてしまうため、本来ならコンバージョンが獲得できるキーワードの配信ボリュームも抑制してしまいます。
間違った判断をしてしまった場合、コンバージョンや売上のポテンシャルが徐々に小さくなってしまうリスクがあります。
コンバージョンが獲得できる可能性の高い検索キーワードを正しく評価するためにも、適切なアカウント構成で配信を行うことが重要です。
アカウント構成の概要
アカウント構成には、複数の要素が含まれており、それぞれで設定できる項目などが異なっています。
アカウント構成に含まれている要素は、次の5つです。
- アカウント
- キャンペーン
- 広告グループ
- 広告(と広告表示オプション)
- キーワード
アカウント
アカウント構成の中で、最も大きな構成要素です。
アカウントには次の要素を設定します。
- ログインメールアドレス
- パスワード
- 支払い情報
アカウントの役割
アカウントは、広告の配信を管理するための最上位の階層です。
リスティング広告を配信する場合は、広告アカウントを作成する必要があります。
キャンペーン
アカウント構成の中で、2番目に大きな階層となっており、1つのアカウントに複数のキャンペーンを作成することが可能です。
キャンペーンの階層からは、リスティング広告の成果や運用に関係する項目の設定が可能です。
キャンペーンには、次の項目を設定します。
- 予算
- 配信開始日や終了日などの配信スケジュール
- 配信ネットワーク
- 広告の配信ローテーション
- 入札戦略
- 広告を配信する地域
- 広告を配信する曜日や時間帯(※)
- 広告を配信するデバイス(※)
- 広告を配信するユーザー属性やオーディエンス(※)
- 除外キーワード(※)
キャンペーンの役割
キャンペーンでは、広告予算の管理や広告配信を行うターゲティングの管理も行います。
商品ごとに使用したい広告費を分けて管理する場合は、キャンペーンの階層で商品ごとのキャンペーンを作成しておくことをおすすめします。
キャンペーンには個別に予算を設定することが出来るため、広告費の管理がしやすくなります。
また、キャンペーンの階層でのみ設定が可能な項目がいくつかあります。
代表的な設定は、『広告を配信する地域』と『入札戦略』です。
商品ごとに販売する事ができる地域が異なる場合や、『サイトへの流入数の増加』と『限界コンバージョン単価の範囲内でのコンバージョン数の増加』のように広告配信の目的が異なる場合は、キャンペーン単位でそれぞれのカテゴリを分ける必要があります。
広告グループ
広告グループではカテゴリ分けしたキーワードや広告、そして広告表示オプションを管理します。
1つのキャンペーンの中に、複数の広告グループを設定することが可能です。
広告グループには、次の項目を設定します。
- 入札単価
- キーワード
- 広告文
- 広告表示オプション
広告グループの役割
広告グループでは、『検索ニーズに合わせて、配信する広告とランディングページ』を管理します。
リスティング広告の成果に最も大きく影響を与える要素が、広告グループです。
広告グループの中に登録しているキーワードに基づいて、同じ広告グループ内の広告が配信されます。
1つの広告グループに複数の『検索ニーズ』をまとめてしまうと、検索ニーズに対して適切な広告やライティングページを配信する事が難しくなります。
検索ニーズを広告グループの階層で整理することで、検索ニーズに合わせて配信するべき広告などを出し分けることが可能です。
広告
1つの広告グループの中に、複数の広告を設定することが可能です。
広告には、次の要素を設定することができます。
- タイトルや説明文
- リンク先URL
- GoogleAnalyticsなどの計測用パラメーター
広告の役割
商品を購入する可能性がある検索ユーザーを1人でも多く、自社サイトに誘導することが広告の役割です。
商品を購入する可能性が高いユーザーに広告を配信出来ていても、ユーザーにとって魅力的な広告が配信出来ていなければ、ユーザーは競合他社の広告をクリックします。
検索ユーザーを効率よく自社サイトへ誘導するためには、広告の効果検証が重要です。
ただし、検索キーワードごとに『ユーザーが反応しやすい訴求ポイント』は異なっているため、効果検証は広告グループ単位で行う必要があります。
広告の配信実績を確認することで、ユーザーが反応しやすい訴求ポイントの傾向を知ることが出来ます。
もしも、複数の広告グループでユーザーが反応しやすい訴求ポイントの傾向が同じであれば、それらの広告グループの『検索ニーズ』は同じ可能性があります。
例えば、【化粧水 お得】という検索キーワードと、【化粧水 価格】という検索キーワードのどちらに対しても、『コスパが良い化粧水』という広告訴求の反応率が良ければ、2つの検索キーワードの検索ニーズは同じ可能性があります。
広告グループを細かく分けることによって検証に必要なクリックやコンバージョンなどのデータが分散してしまうデメリットもあるため、複数の広告グループで訴求ポイントの傾向が同じであれば、それらの広告グループは1つにまとめることも検討しましょう。
広告グループをまとめることで、1つの広告グループでのクリック数などのデータが溜まりやすくなるため、広告文の検証スピードも改善することが出来ます。
キーワード
1つの広告グループの中には、複数のキーワードを登録することが可能です。
キーワードには、次の要素を設定することができます。
- マッチタイプ
- (手動入札の場合)入札価格
- リンク先URL
- GoogleAnalyticsなどの計測用パラメーター
キーワードの役割
検索キーワードに対して、意図した広告やランディングページを配信するためにキーワードを設定します。
ユーザーがキーワードを検索した際、広告グループ内に『検索キーワードと関連する登録キーワード』があれば、広告が配信されます。
また、各キーワードへ設定しているマッチタイプによって広告配信する検索キーワードの範囲を調整することも可能です。
さらに、各キーワードへリンク先URLを設定することで、検索キーワードに合わせてユーザーを誘導するランディングページを変更する設定も可能です。
アカウントの設計方法
アカウント構成の作成方法について解説します。
アカウント構成は、次の4ステップで作成します。
- アカウントに登録するキーワードを選定。
- 選定したキーワードを、『広告グループ』単位でグループ分け。
- 広告グループを、『キャンペーン』単位でグループ分け。
- それぞれの広告グループに、広告と広告表示オプションを追加。
1つずつ解説します。
➊ アカウントに登録するキーワードを選定
まずはじめに、広告配信を行うためのキーワードを決める『キーワード選定』を行います。
広告を配信するキーワードで何を選ぶかによって、アカウント構成も変化します。
まずは自社の商品を求めているユーザーが検索するキーワードを整理し、実際に広告を配信するキーワードを選定します。
また、可能であればGoogleのキーワードプランナーなどの無料ツールを使用して、各キーワードの検索ボリュームなどを調べておくことをおすすめします。
検索ボリュームも合わせて整理しておくことで、広告グループを作成する時の参考にすることが出来ます。
❷ 選定したキーワードを、『広告グループ』単位でグループ分け
選定したキーワードを、『検索ニーズ』ごとにグループ分けを行います。
ユーザーが商品の品質を重視しているのか、それとも価格を重視しているのかなどの違いによって、広告などで訴求するべき内容は異なります。
ここでは『価格重視の検索キーワード』、『品質重視の検索キーワード』のように同じ検索ニーズを持っているユーザーの検索キーワードをグループ分けします。
また、重要視している要素以外にも、「とりあえず試したい!」と思って検索するユーザーと、「定期購入したい!」と思って検索するユーザーでは、検索キーワードや訴求するべき内容に差がありそうです。
このように『ユーザーがどのように商品を購入したのか?』という観点も含めて、検索ニーズを分けることで、よりユーザーの興味を引くことが出来る広告を作成する事ができます。
細かく分けすぎてしまうことで、広告グループにクリックなどのデータを溜める事ができないという問題が発生するため注意は必要ですが、検索ニーズが異なるキーワードをまとめても成果が出にくくなるため、最初は細かく分けておくことをおすすめします。
万が一、細かく分けすぎていても、広告配信を開始してすぐに気付くことが出来ます。
再びアカウント構成を考える必要はありますが、不自然に検索ニーズをまとめたことで費用対効果が低い広告配信によって、広告費が無駄になってしまうリスクは回避できます。
もしも、この段階で『各キーワードの検索ボリューム』を準備できている場合は、配信開始する前に「広告グループが細かく分かれすぎているかもしれない。」と気付くことが出来ます。
❸ 広告グループを、『キャンペーン』単位でグループ分け
広告グループ単位でまとめたものを、さらにキャンペーン単位にまとめていきます。
エリアや配信スケジュールなどの、キャンペーンの階層でのみ設定可能な項目を複数設定する場合は、キャンペーン単位で分ける必要があります。
一方で、すべての広告グループで設定する項目が同じ場合は、1つのキャンペーンにすべての広告グループをまとめるような構成でも問題ありません。
ただし、商品ごとに広告費を管理する場合は、管理のしやすさの観点からキャンペーンで分けておくことをおすすめします。
❹ それぞれの広告グループに、広告と広告表示オプションを追加
最後に、それぞれの広告グループの登録キーワードに合わせて、広告と広告表示オプションを追加します。
作成する広告は、広告グループ間で重複しないように注意しましょう。
もしも、複数の広告グループに同じ広告を追加した方が良いと感じた場合は、それらの広告グループは『検索ニーズ』が同じ可能性があります。
不必要に広告グループを細分化している可能性があるため、該当の広告グループをまとめる事を検討してみましょう。
アカウント構成のポイント
売上や利益を増やすために、『成果が出やすいアカウント構成』を作成するためのポイントについて解説します。
成果が出やすいアカウント構成を作成するポイントは、次の3つです。
- 検索キーワードに対して、意図した広告とランディングページを配信する
- 実績の変化を確認しやすく、すぐに対策を取ることが出来る
- 頻繁にチェックする指標をすぐに確認することが出来る
1つずつ解説します。
➊ 検索キーワードに対して、意図した広告とランディングページを配信する
アカウント構成の重要な役割は、検索キーワードに対して意図した広告とランディングページを配信することです。
適切なアカウント構成で広告を配信することによって、検索キーワードに対して反応率が高い広告や、購入につながるランディングページを配信する事ができます。
この検索キーワードと広告、ランディングページのマッチングが出来ていることが、成果の出しやすいアカウント構成の条件になります。
Googleでは、『Hagakure(ハガクレ)』という考え方で紹介されており、Hagakureの考え方に沿ったアカウント構成を作成して広告配信を行うことが推奨されています。
Hagakureに沿ったアカウント構成で広告配信することで、クリック単価を下げることが出来たり、安い入札価格でも検索結果で上位掲載することが出来るなどのメリットがあります。
検索ニーズ・広告・ランディングページのマッチングについて確認する方法としては、各媒体が提供している『検索語句レポート』の活用をおすすめします。
検索語句レポートでは、広告グループごとの『検索ニーズ』とマッチしてる検索キーワードが拾えているかどうかを確認することが出来ます。
❷ 実績の変化に合わせて、すぐに対策を取ることが出来る
アカウント構成を作成する場合、『成果改善の対応を簡単に行えるかどうか』がとても重要です。
運用型広告のリスティング広告は、実績を確認しつつ、配信ボリュームなどの調整などを定期的に行う必要があります。
広告の成果へ大きく影響する要素の1つとして『競合要因』がありますが、リスティング広告では競合状況の変化が激しいという特徴があります。
先月まで広告配信していなかった企業や、Amazonなどの大手モールサイトが、突然広告の出稿を開始する事があります。
その逆のパターンとして、広告出稿している企業が突然少なくなることもあります。
このような変化が起こった時にすぐに気づくことができるようなアカウント構成であれば、『機会損失や成果の悪化が継続するリスク』を配信ボリュームの調整によって軽減させることが出来ます。
ただし変化に気づくことが出来ても、配信ボリュームを調整するなどの『必要な対応』が出来なければ意味がありません。
例えば、自動入札を使っている場合、配信ボリュームは広告グループ単位で調整することになります。
もしも、配信を強化したい(または抑制したい)要素が広告グループ単位で分かれていない場合は、成果に対して配信ボリュームを調整することが難しくなります。
実績の変化を確認できた上で、適切な対応を取ることが出来るアカウント構成を作成することが、成果を安定させるために重要です。
❸ 頻繁にチェックする指標をすぐに確認することが出来る
コンバージョン単価のような頻繁にチェックする指標の実績を、すぐに確認することができる状態にしておくことも大切です。
「商品ごとに広告配信で利益が残せているかどうか?」など、広告運用中に頻繁に確認するような項目はキャンペーンや広告グループで分割し、すぐに確認出来るようにしておくことをおすすめします。
D2Cで分けておくと便利な要素は、販売している商品や、定期購入とお試しプロモーションなどの『1件のコンバージョンから得られる利益が異なる要素』です。
キャンペーンや広告グループを分けておくことで、毎回レポートなどをダウンロードして実績を確認せずとも、広告アカウントの管理画面で簡単にリアルタイムの実績を確認する事ができます。
運用型広告の「実績を確認する頻度が高い」という特徴を考慮して、実績が確認しやすく、また市場や競合などの変化の激しい動きを可視化しておくことが、安定した成果を出すためには重要となります。
まとめ
今回は、リスティング広告のアカウント構成に関する基礎知識から、実際にアカウント構成を作成する方法とポイントについて解説しました。
アカウント構成は、キーワード選定と同じく、リスティング広告の成果に大きく影響します。
すでにリスティング広告を開始している方であっても、アカウント構成を見直すことで、成果を大きく改善することが出来る可能性があります。
また、アカウント構成は最初から完璧なものが作れるわけではないため、広告の配信実績から得た仮説などを使って、アカウント構成を定期的に調整することをおすすめします。