ECサイトを作る上で、なくてはならないシステムのひとつである「ECカートシステム」。
ECカートとひとくちに言っても実は様々な種類があり、使いやすいものやコストパフォーマンスがいいものなど、それぞれ違うメリットがあります。
ECカートとはそもそもどんなものか、どういった点に注目してシステムの種類を選べばいいのか解説します。

ECカートの基本機能
ECカートというのは、商品をネット上で売買するために必要なソフトウェアのことです。
店舗型のお店に当てはめて考えてみると、レジのような機能を持っています。
例えば、スーパーマーケットで買い物をするとき、商品をショッピングカートに入れてレジまで運び会計をして購入しますよね。この作業をオンライン上で行うためのソフトウェアが「ECカート」です。
インターネット上での商品の売買を可能にしてくれる機能が揃っており、ECサイトはこのECカートを導入してネットショップを運営しているのです。
ECカートシステムとして最低限必要とされるのは、webサイト上で商品を選んでカートに入れ、カート内にある商品の購入手続きをするというふたつの機能です。
ですが実際には、多くのECカートシステムにもっと多彩な機能が備わっています。
ほとんどのECカートシステムで使うことができる基本的な機能を以下にまとめました。
■ECサイトの運営側が使用する機能
- 商品ページの作成
- 顧客や売上の管理、分析
- 購入者とのコミュニケーション機能
- 顧客へのフォロー
■ECサイトのユーザー側が使用する機能
- 商品をカートに入れる
- 注文の受付、記録
- 配送先、配送方法、決済方法の指定
- 決済の手続き
ECカートの種類
ECカートは、おおまかにいえば3つの種類に分かれています。
- パッケージ型
- オープンソース型
- ASP(クラウド)型
それぞれネットショップの開設までにかかる時間、費用、運営していく中で可能なことなどいろいろな点で違いがありますので、ひとつずつ詳しくみていきましょう。
➊ パッケージ型
「ECサイト構築パッケージ」とも呼ばれるのがこのパッケージ型のタイプです。
自社でECサイトをすべて構築・運営する場合には、このECサイト構築パッケージ型のECカートシステムが必要になります。
ECカートシステムを自社で管理しているECサイト用のサーバーにインストールして利用する形です。
ECカートシステムに限らず、ECサイトの運営に必要な機能を多く兼ね備えているのが特徴で、商品管理、サイトに掲載する文章や画像といった各種コンテンツ、ブログやメルマガ機能など、基本的な運用であればほとんどまかなえるはずです。
導入時や自社で行うシステムメンテナンスなどにコストはかかってしまいますが、利用する際の自由度はとても高くなるのがメリットといえます。
希望する機能やデザインなど自由にカスタマイズできるため、自社ECサイトとして細部にまでこだわって構築・運用していきたい場合にはぴったりです。
ただその分コストはかなり高めになるので、億単位の年商を見込む大規模なショップとしての運営が想定されるケースに向いています。
❷ オープンソース型
オープンソース型というのは、インターネット上に無料で公開されているソフトウェアをサーバーにインストールして使うタイプのECカートシステムを指します。
無料で公開されているソフトウェアを使用するので、ECカートシステムの基本的な機能を低いコストで利用でき、ECサイトの開発費用を大幅に抑えることが可能です。
またオープンソースのソフトウェアはソースコードを改変することもできるので、必要に応じてカスタマイズして利用することも可能です。
デメリットとしては、システムになんらかのトラブルが起きたときのサポートやフォローがないということ。
バグが発生した場合など、自社で対応しなければいけないことは覚えておきたいですね。
❸ ASP(クラウド)型
自社の独自のドメインでECサイトを開設したいができるだけコストは抑えたいという場合に適しているのが、ASP(クラウド)型と呼ばれるECカートシステムです。
クラウド上に存在しているプラットフォームを利用する形態で、サーバーやアプリケーションなど、セットでレンタルするような形になります。
1から自社でシステムを構築する必要がなく、お手頃な料金で利用できるのがいちばんのメリットです。
サイトのためのサーバーを自社で用意する必要もなく、コストだけではなくECサイトの構築にかかる期間も短く済ませることができます。
デメリットとしては、細かいカスタマイズなどは難しいことが挙げられます。
あくまで決められたプラットフォーム内でサイトを運営することになりますので、どうしてもECサイトの見た目や導入するコンテンツ・機能などの自由度は低くなってしまいます。
ECカートの選び方
これまでにご紹介してきた3種類のうち、どのECカートがいちばん適しているかを判断するには、目標とする売上や商品の数、コストや時間など確保できるリソースなどさまざまな要素がかかわってきます。
- 事業規模
- 決済手段
- 安定した運営先かどうか
特に押さえておきたいポイントを以下に取り上げましたので、どのECカートを選べばいいかわからないという場合にはぜひ参考にしてみてください!
➊ 事業規模
現在の事業規模だけではなく、今後目指していく事業規模についても考えてみましょう。
今後大きな規模の事業にしていきたいと考えているのであれば、その分ショップとして利用したい機能の数や幅も多くなっていくのではないでしょうか?
年商1億から数十億円レベルの大規模なECサイトへの成長を見込んでいる場合、自由度が高くさまざまな機能を兼ね備えているECサイト構築パッケージ型のECカートシステムがおすすめです。
事業規模としては今のところひかえめなものを想定しているけれど、自社ECとして運営していきたい場合にはコストを抑えられるASP(クラウド)型が適しているでしょう。
今後長くECサイトを運営していくかは未定、試験的にECカートを運用してみたいというケースにもおすすめです。
ネットショップで取り扱う商品の数がさほど多くない場合、もしくは自社のECサイトとしてオリジナリティーのある運営をしたいなどのこだわりがない場合には、自社のECサイトを構築するよりも各種ECモールへ出店するという手もあります。
手軽かつ簡単にネットショップ事業をスタートできます。
❷ 決済手段
選べる決済手段の幅は、見逃せない大きなポイントです。
銀行振込・代引き・クレジットカード決済など、一般的な決済手段についてはほとんどのECカートシステムで導入されていますのでさほど気にする必要はありません。
ですが昨今は、後払いや掛売りなど、若干特殊な決済手段を売りにしているネットショップも多いですよね。
こうした決済手段も選べるネットショップにしたいという場合には、ECカートシステムを選ぶ段階で、利用できる決済手段をしっかりチェックしておく必要があります。
PayPalやAmazonペイなどの決済システムの利用を考えている場合でも、そういったシステムへのサポートがあるかどうか確認しておきましょう。
❸ 安定した運営先かどうか
ECカートのサービスを提供している会社が、安定した運営を行っているかどうかも大切なチェックポイントです。
提供しているサービスの内容はしっかり確かめていても、運営先の安定感については見逃してしまうことも多いかと思います。
有名なサービスであれば大丈夫だろうと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、実際にはある程度知名度のある会社のECカートシステムであっても、突然のサービス終了は十分にあり得ることです。
ECカートはECサイトの基盤となるシステムでもあります。
長い時間とコストをかけてECサイトの開設準備を進め、いざネットショップの運営をはじめた途端にサービスが終了してしまった場合、再びたくさんのコストと時間をかけて移転作業を行わなければなりません。
そのリスクを避けるためにも、導入前にサービスの安定性をチェックすることはとても重要です。
ECカートシステムを選ぶ際には、サービス提供元の会社の規模やここ数年の成長率なども確かめておきたいですね。
おすすめECカート3選
それでは最後に、これまでにご説明してきたポイントを踏まえて、ECサイトの構築にぜひおすすめしたいECカートを3つご紹介します!
- Shopify(ショッピファイ)
- base(ベイス)
- MakeShop(メイクショップ)
➊ Shopify(ショッピファイ)
カナダで創業したShopifyは、世界175カ国、170万件以上のネットショップで利用されている人気のECカートシステムです。
人気の理由はデザイン性とカスタマイズ性の高さが挙げられます。
企業としての成長も著しく、突然サービスが終了してしまうというリスクは気にせずに済みそうです。
日本のユーザー向けのローカライズも進められており、日本でもShopifyを利用するEC事業者はどんどん増えています。
自社のECサイトを1から構築できるだけでなく既存のECサイトからデータを移行することも可能なので、現在利用しているECカートシステムから新しいECカートシステムへ移行したいというケースにもおすすめできます。
通常の商品だけでなく、ダウンロードコンテンツの販売、ドロップシッピングなど製品の販売にも対応しているので、取り扱う商品の幅も広がります。
料金プランはベーシック・スタンダード・プレミアム・Shopifyプラスの4種類に分かれています。
ベーシックプランであれば月額は日本円でおよそ3,200円程度とかなりリーズナブルな価格設定です。
ベーシックプランでも使える基本的な機能はかなり充実していて、FacebookやInstagram、Amazon、Pinterest、GoogleShoppingなど各チャネルで商品を販売できるマルチチャネルプラットフォーム、各種拡張機能をダウンロードできるShopifyAPPストアの利用、在庫管理、越境ECへの対応、ストア分析、ShopifyPOSの搭載などが利用できます。
また、ECサイトで利用できるデザインテンプレートはなんと100種類以上あります。
自社イメージに合ったサイトデザインを選べるのも大きなメリットです。
サードパーティが独自に開発している拡張機能による拡張性の高さやSNS連携による集客力、越境ECへの対応、システム連携による業務の効率化、クラウド型のサービスなのでいつでも最新のシステムが利用できる…など、さまざまなメリットを持っているECカートシステムながら、コストパフォーマンスに優れているのが魅力的です。
ECサイトの構築や更新も簡単で運用しやすいのもポイントです。
❷ base(ベイス)
base(ベイス)は、完全に無料ではじめられるASP(クラウド)型のECカートシステムサービスです。
かかるコストは、商品売上時の決済手数料、利用料(売上の3%)、売上振込時の手数料のみになります。
コストをできるだけ抑えてECサイトを運用したいという方にはぜひおすすめしたいショッピングカートASPです。
日本国内ではトップクラスの導入実績で、特にハンドメイドの作品やオリジナルの商品を販売している個人事業主からの人気が高いです。
インターネット通販を簡単にはじめられることから、食料品店や生産者が利用しているケースも多くみられます。
繰り返しになりますが、アカウントの開設やシステムの利用にかかる費用は無料です。
ネット環境さえあれば、アカウントを開設したその日から商品の販売をスタートさせることができます。
コストがとにかく安い分機能はとてもシンプルでECサイトとしてのカスタマイズ性も低いですが、WordPressとの連携が可能なので、WordPressを利用したブログやサイトがあればbaseと連携させて物販ページをつくることもできます。
❸ MakeShop(メイクショップ)
国内では高いシェア率と顧客満足度で知られるASP(クラウド)型のECカートシステムです。
先ほど紹介したbaseとは違い有料のシステムで、初期費用が10,000円、月額費用は10,000円かかりますが、その分機能も充実しています。
ECサイトをつくる上でいろいろとこだわりたい点があるという場合には、選択肢の幅が広がるMakeShopもおすすめです。
マーケティング面でのバックアップが手厚いのも特徴で、メルマガの配信やSNSとの連携機能、ユーザーの行動履歴に応じた商品のレコメンドなど、細かい部分までサービスが行き届いているECカートシステムです。
WordPress連携オプションを利用すれば、ECサイトと同じドメインでWordPressを導入・運営することもできます。
まとめ
今回は、ECサイトを運営する上で必須のECカートシステムについてご紹介しました。
基本的な機能やECカートシステムの種類によってできること・できないこと、かかるコストなどを知ることで、自社の運営するECサイトにいちばん適している形態のシステムを選べるようになるはずです。
自社に合っているECカートシステムを選択することは、その後の売上にも影響してくる重要なポイントです。
どんなECカートシステムを選ぶべきか決め兼ねたときにはぜひ参考にしてみてください。